モダンローズと違い、病虫害に強く、優しい色彩のイングリッシュローズは日本の庭にも調和するのでバラ愛好家だけでなくガーデナーの人気となっています。
そんなイングリッシュローズを無農薬で栽培するためのおすすめの土、肥料、肥料の時期、無農薬で育てるためのヒントなどについてご紹介したいと思います。
強健な品種のイングリッシュローズは、バラでは難しいと言われている無農薬栽培を試すことが十分にできると思います。
気候やお庭の環境にも左右されるかと思いますが、イングリッシュローズを無農薬で楽しむヒントにしてみてくださいね。
イングリッシュローズの土のおすすめは?
植え付け時の土~ふかふかやわらかく~
仕事で疲れた一日を、ふかふかのベッドやお布団でぐっすりと眠るとすっきりしますよね。
元気が湧いてくるはずです。
それはバラも同じです。ベッドとなる土が、健康に成長するためにとても重要です。
土の環境次第では、人と同じく疲れが残って病気になってしまったりします。
適切な土は、根を健全に成長させ、栄養の吸収が良く、根が充実します。
植え付け時の土は、根をこれから広げるために、とても重要な要素となります。
また、植え付けた後も、鉢植えなら定期的な植え替えをすることで、土を入れ替えて根と株をリフレッシュさせることができます。
この時の土もとても重要です。
でも、大切にするあまり、「過剰に」しすぎても、強くはなれません。
「過剰」とは過度な肥料や農薬などの使用を意味します。
一度化学系の薬を与えてしまうと、自然の環境に戻すにはとても時間がかかります。
かといって、まったく殺菌、防虫しない環境では病虫害が心配です。
こんな風にお話ししていると、年中、管理に追われて、それでも枯れてしまう・・・という風に思ってしまいますよね。
でも、そんなバラの印象を覆したのがイングリッシュローズです。
デビッドオースチン氏がバラへの愛情と情熱、そして美学によって誕生させたイングリッシュローズです。
イングリッシュローズは、花付きはもちろん、病虫害に強く、管理のしやすい品種がたくさんあります。
特性と強さを活かすことで、化学系肥料に追われたりすることなく無農薬で育てることにチャレンジできるのです。
そして、その為にも、冒頭でお話ししたように土がとても大切なのです。
バラを植える前に~ バラ栽培の7つの法則を守る~
まずはバラを丈夫な株にするための7つの法則についてご説明したいと思います。
土だけでなく様々な環境を整えることで病虫害を防ぎ、強い株へと成長します。
健全で強い株は病気や害虫にかかったとしてもタフです。
法則その1 日当たりが重要
春から秋に5時間以上日光が当たるような環境がベストです。
法則その2 水やり
植え付けから根付くまでと鉢栽培の水やりはとても重要です。
法則その3 施肥
バラの成長に肥料は欠かせません。適量、適期を守ります。
法則その4 風通し
風通しが悪いと病気になりやすいです。強すぎると枝を痛めます。
法則その5 培養土
土は根のすみかとなります。健全な根が育てば栄養を十分に吸収し、根が充実します。
法則その6 剪定などの管理
剪定には、株をリフレッシュさせ、良い花を咲かせ、病虫害を防ぐなどの目的があります。
法則その7 病害虫対策
全てのバラに発生する可能性があるので、前述の法則を守りつつ、健全なバラを育てましょう。
良い土をつくる~無農薬栽培の第一歩~
できるだけ無農薬でバラを育てるためには前述の法則が前提です。
その上で病虫害に強い品種を選ぶと良いでしょう。
また、ご自身が管理できる数で育てることも重要です。
「バラづくりは土づくりだ」というようにバラの土の環境はとても重要です。
保水力
保肥力
排水性
通気性
つまり、これらを良好に保つ土が良い土だということです。
そして、この要素にプラスして、私は「炭」を使用します。
土に炭を混ぜると慧にある小さな穴で通気性がよくなり、保水力と保肥性が高まり、微生物が増えるようです。
微生物は土をかたくしないため、バラの根の発育を良好にしてくれます。
この微生物が良い土と密接な関係があります。
化学肥料や薬品を使用すると、これらの有益な微生物が死んでしまいます。
そのため、活力を戻そうと化学肥料を与えて・・・となんだか追いかけっこになるのはご想像できるかと思います。
基本の土のつくり方~基本のレシピ~
有機性肥料、資材で作られたバラ専用培養土は初心者には特におすすめです。
でも、ちょっとお高いので、簡単にバラに適した土を作るレシピをご紹介したいと思います。
赤玉土(中粒+小粒)3 :有機質6 :通気性改善資材1
この割合が基本ベースです。
有機質
分解速度が違うので2種類以上を混合します。腐葉土は病虫害のリスクを考え私は使用しません。
牛糞
馬糞
ピートモス(北欧産がおすすめ。繊維が長く太めの国産はマルチングに使用)
バーク堆肥
通気性改善資材
土がかたくならないように、通気性資材も混合します。
パーライト(コガネムシの幼虫の忌避効果があるので、鉢植えでの使用は特におすすめ)
木炭(鉢底石の代わりに木炭、土に混ぜ込むのは「もみがらくん炭」がおすすめ)
その他
保肥力に優れた「珪酸白土(ミリオン)」を少し混ぜるのもおすすめです。
イングリッシュローズの肥料のおすすめは?
肥料と土の関係
前章でバラは土づくりで良くなり、その土は微生物で良くなることをご紹介させていただきました。
その微生物を殺さない為にも、肥料のチョイスは重要です。
ちなみに、前章でご紹介した土は有機質が多いので「ふかふかした土」となります。
ふかふかした土は根の呼吸を妨げません。そして根が呼吸をしやすいことで空気の交換が起こり、栄養分の吸収も促進されます。
つまり、土づくりと肥料は密接な関係があるのがおわかりいただけると思います。
ぎゅうぎゅうにかたくなった土に肥料を与えても、吸収率は悪くなります。その土を改善させるために活性剤(非化学系)を与えても効果は薄いです。
肥料、活性剤などの効果を高めるためにも環境の7つの法則、その中でも土づくりがとても重要となります。
ちょっと補足~堆肥=肥料ではない~
厳密にいうと、堆肥は肥料ではないのはご存知でしょうか?
堆肥の肥料成分はごく微量、主な役割は土壌を改良することです。
水を保持し、微生物を増やし、やわらかいふわふわの、植物が呼吸しやすい土を作ることなのです。
牛糞や馬糞も土壌改良の力が強いです。
地植えなどで大量に混ぜ込んでやると、土壌改良と同時に、通常の施肥では不足しがちなマグネシウム(Mg)も補えます。
おすすめの肥料~バラの構成元素から考える~
バラの肥料として、様々な書籍で紹介されている共通の成分は「窒素、リン、カリ」です。
このNPKを取れば万全とばかりに紹介されているので、安心している人も多いことでしょう。
でも、実はバラが構成されている元素から考えると、上記の他にマグネシウムとカルシウムの割合が多いのです。
つまり、バランスの良い肥料とはバラを構成している元素で比率の高いものを補うためのもの、という発想です。
特にマグネシウムは光合成の際に必要な元素となります。
そこで、このマグネシウムを補える有機肥料をご紹介したいと思います。
それは、
「米ぬか」です。
米ぬかにはビタミンBも含まれているので発根促進作用もあるとされています。
コンポストに米ぬかを混ぜ込んで分解を促進させている方もいらっしゃることと思います。
使用する米ぬかは、生でもいいですし(塩分などが添加されていないもの)米ぬかペレットとして市販されているものでもいいでしょう。
米ぬかの主な使い方
地植えだとカップ1~2杯/回
鉢植え(10号鉢まで)は、大匙1~2杯/回
土の表面に散布し、虫が寄ってこないよう、ごく表面のみに混ぜ込むようにしましょう。
散布後はマルチング(バーク堆肥やピートモス)しましょう。
これで、葉の変色や変形、シュートが出ない、病気になりやすいなど、ミネラル不足からの不調から脱却できると思います。回数は様子を観察しながら、環境と株に応じて調整してみてくださいね。
土の表面がかたくなったり(これは一度にたくさん施肥しなければ防げますが)、臭いが気になったりする人には米ぬかペレットも販売されているので、こちらだと気にせず使えると思います。
肥料の時期
元肥(寒肥) 移植や植え付け時などに施肥する場合は根に直接触れない様に注意しましょう。
追肥 3~11月に与えます。
ブッシュや小型のシュラブは開花ごとに追肥します。
しかし、ツル性や大型シュラブの中には追肥は控えた方が秋の花がたくさん咲くものがあります。
イングリッシュローズ 無農薬で育てるには?
バラには病虫害のリスクはつきものとお話しさせていただきました。
強健とはいえ、イングリッシュローズも例外ではありません。
イングリッシュローズを無農薬で育てるためには



これらがポイントとなるでしょう。
病虫害に強い品種を選び、適切な環境(7つの法則)で栽培し、そして土と肥料を特に気を付けてあげると「さらに強い」バラに育ってくれることでしょう。
とはいえ、やはり過度のストレス、つまり「病気や虫」は少ない方が、バラを疲労させないためには予防と対処が必要です。
害虫対策~虫をシャットダウン~
無農薬でイングリッシュローズを育てるといっても虫は避けたいところです。
虫対策で効果的な方法をご紹介したいと思います。
①パトロール&捕殺
虫の対策で一番大切、有効なのは、パトロール(見回り)と捕殺です。
毎日バラを観察(パトロール)し、見つけたら捕殺。
これが一番てっとり早いです。
例えば、アブラムシに効くとして「牛乳スプレー」が挙げられます。
牛乳が乾くときにアブラムシも一緒に乾燥させて死滅させる・・・という効果があります。
でも、私は面倒なので、アブラムシを見つけたらすぐにつぶしながらそぎ落とします。
深刻な被害を与えるコガネムシの幼虫なども、見回りが重要です。
ふかふかしすぎた土になっていると、掘り返してチェックする必要があります。幼虫が眠っているかもしれません。
このようにパトロールと捕殺で対応できますが、それでも補助としておすすめのものをご紹介したいと思います。
②自然農薬を利用
化学系の農薬を使用せずに土壌改良にもなる自然農薬を使用してみましょう。
・木酢液
葉面散布よりも土壌改良と殺菌の効果を目的とした使用をおすすめします。
殺菌目的 20~30倍希釈液を植込み1週間以上前に混ぜ込みます。
土壌改良目的 100~200倍希釈液を液肥として与えます。生育が不調の時に。
にんにくを木酢液につけこんだにんにくエキスやトウガラシエキスと混合するとアブラムシやチュウレンジバチなどの忌避効果、黒点病の発生の減少に効果があるようです。
・ニームオイル
インドセンダンの英名がニームです。
インドで虫下しとして古くから使われてきた植物で、アザリラクチンという有効成分が昆虫への忌避効果、成長阻害効果があります。
この成分の優れた点は、肉食昆虫やミミズなどの土中有益動物、脊椎動物に毒性がないことです。
虫除けと同時にうどんこ病に効果があります。
・重曹スプレー
うどんこ病対策に。重曹を500~1000希釈、1リットルにつきせっけん液を2、3滴プラス。
・食酢スプレー
うどんこ病対策に。
20倍希釈で使用。
うどんこ病発生した葉を拭くと病気も治まります。
③コンパニオンプランツとマルチング
ネギ、にんにく、チャイブなどは黒点病、虫除けに効果があるようです。
土の表面をマルチング(バークチップや粗目のピートモス)することで黒点病を予防できます。
これらの方法を取り入れるだけでも、病気や虫のリスクを軽減することが可能です。
④完璧を求めない
化学系肥料や農薬でもいえることですが、完璧に虫や病気を防ごう、完璧なバラを育てようと思うと、苦行になってしまいます。
完璧を求めすぎず、効果や量は「実験」のつもりで取り入れて、イングリッシュローズへの効果と成長を、ひとつの楽しみとしてはいかがでしょうか?
イングリッシュローズの土と肥料のまとめ
イングリッシュローズは強健な品種ですが、やはりバラなので病虫害対策が必要です。
健康な株にすることが、対策の第一歩。
そのために、土や肥料はとても重要です。
化学系のものに頼らずに、無農薬で育てることにもチャレンジできるのは、病害虫に強い品種のイングリッシュローズの強みといえるかもしれません。
今回ご紹介した土の配合、肥料、自然農薬は環境や株の状態によって効果も変化すると思います。
イングリッシュローズを無農薬で育てることを楽しんでみてくださいね。