最近は山ガールブームもあり、お洒落なトレッキングウェアやカラフルな登山服が増えました。
そこで春山登山の服装、装備、靴について少しお話ししようと思います。
春になると、彩り豊かなウェアを着て登山する人が山を彩りますが、中には「え?それで山に入るの?」という人も見かけます。
これらは命を守ってくれる役割をする大切なものです。
春になって登山をしてみようと思う方、これから登山服を買おうと思う方はぜひ、参考になさってくださいね。
目次
春山登山の服装はどうしたらいいの?
春は3月~5月と暦では春ですが、山の世界で春山は「冬と春の境界線」でもあります。
危険な登山の時期というと『冬山登山』を思い浮かべる人は多いことでしょう。
冬山登山は、経験が豊かな人しか山に踏み入れてはいけない、というイメージを持ちますが、なぜか『春山登山』となると、トレッキングやハイキング、季節が良くなったので気軽に登山しようかなと簡単に捉える人も多いようです。
どの季節にしろ、『登山』として入山するのなら適切な服装と装備が不可欠です。
季節や山の標高だけで、登山の難易度や危険度ははかれません。現に低山では気軽に軽装で登山をした結果、遭難してしまったという事例も少なくないのです。
そのため、春山の美しい山で安全に登山を楽しむためにも、服装はとても重要なのです。
様々なスポーツにしても、そのスポーツに適した服装があるように、登山にも適した服装があり、それは登山する人の命を守ってくれるもの、いわば登山服も装備の一つといえるでしょう。
春山は前述のように、冬の次の季節の為、山のいたるところに「冬の名残」がありますし、時には冬に逆戻りすることもある、ちょっと難しい季節ともいえます。
軽装や軽装備で冬に遭遇したらと思うと、考えるだけで寒く、怖いですよね?
低山登山の遭難例はこちら。
衣服に潜む危険性例も ⇒ 低山で遭難や事故の体験談5例。とっても危険な低山登山
そこで、春山登山を安全に楽しむ為にも大切な、春山登山の服装について、基本的な事からご紹介したいと思います。
これから春山で登山を始めてみようという方はもちろん、トレッキングが趣味という方も一度点検を兼ねてごらん下さいね。
まずは、基本中の基本、登山の服装のご紹介です。
登山服はレイヤードが基本
登山服の基本はレイヤードスタイルです。
カラフルなスパッツにスカート、長袖のシャツの上にTシャツ、お洒落なストールに帽子と本当にファッショナブルになった登山服。
登山の楽しみにファッションも含まれ、老若男女問わず登山に関心を持ってくれるというのは嬉しい進化です。
このファッショナブルな重ね着、これらも基本的には「レイヤードスタイル」であることには間違いありません。
レイヤードとは「重ね着」のこと。
山では
アンダー
ミッド
アウター
を重ね着することになります。
モンベルやパタゴニア、ファイントラックなどから販売されている登山服の説明にも、これはミッドウェアとして・・・など用途が説明がされていると思います。
重ね着、つまりレイヤードが基本という主な理由は
体温調整をするため
雨や風などの天候に対応するため
身体の機能を補助するため
などの理由が主にあります。
これをご覧になったら「おしゃれのため」という言葉がないので、戸惑う方もいるかもしれませんが、山ではレイヤードは「安全に登山するため」と認識しましょう。
インナーはとっても大切!
下着にあたるのがインナーウェアです。
初心者で一番ないがしろにしがちなのがこのインナーかもしれません。
でも、一番大切なのが実はこのインナーウェア。
インナーウェア次第で快適さはもちろん、疲労度も全く変わります。
綿素材は厳禁です。
綿素材は濡れると乾きにくく、体温を奪ってしまい、疲労感を増すだけでなく、時には低体温症や脳梗塞、そのほかの疾患のトリガーになることもあるからです。
各アウトドアショップ、登山用品店で登山用のインナーが販売されています。
速乾性に優れていて、季節に応じた素材や厚さのものがラインナップされています。
汗などの水分を素早く吸収しつつもさらっとした着心地です。
また、冬用などは保温や発熱などの機能のある素材となります。
春山登山では冬用の厚手のものは避けましょう。
歩くと汗をかきますが、この汗をかくという事自体が疲労度をアップさせますし、体温を奪ってしまいます。
レイヤードして「肌寒いな」と思ったらミッドで調整します。
気温ではなく、「風が吹いて肌寒いな」と思ったらアウターで調整します。
ミッドは脱いで調整できますが、インナーはなかなかできないので、インナーでいきなり厚くしないほうが、汗をかいて体を冷やすこともありませんし、体温コントロールがしやすいのです。
雪が残っている春山に登る場合もあると思いますが、基本、春山登山のインナーは薄手の「春夏用」がベストです。
後の装備の章で触れますが、私は天候が急変した場合や濡れた場合に備えて「替えのインナー」をジップロップに入れています。
日帰りトレッキングでも持っているのですが、このインナーは少し厚手のものにして、もしもの時は重ね着できるようにしています。
私は汗かきなので、このインナー、様々な会社のものを試しました。
春山の縦走、沢登り、雪の残る高山登山などで試したのですが、結局一番薄手の長袖インナーを着用しています。
GWなどは最近の気温上昇の事もあるので、長袖ではなく半袖やランニングタイプのインナーで、ミッドにインナーと中間的に着られるものを着用する場合もあります。
女性が登山する場合だと、カップ付きタンクトップのインナーを着用し、その上に更にインナーとして半袖や長袖のインナーを着るのがオススメ。
間違っても「インナーは登山用の吸水速乾性のものだけれど、ブラやカップ付きタンクトップは綿素材」なんてことにならないようにしてくださいね。
とにかく、インナーは上下全て綿素材を避けること。
いえ、登山服全般で綿素材は避けるようにしたほうが良いでしょう。
そして、春山は厚手のものは避ける事がポイントです。
体温調整はミッドウェアで!
発汗による体温の冷却や上昇を防ぐのにはインナーが大きな役割をします。
ミッドウェアは外気や風によって体温が奪われることを防ぐ役割をします。
肌寒い、暑い、どちらにしてもミッドウェアで調整します。
暑ければ脱ぐ。
寒ければ着る。
シンプルにこれだけです。
ミッドウェアとなるものは
ボタン付き長袖シャツ
長袖シャツ
フリースウェア
フリースベスト
インナーダウン
インナーダウンベスト
などがあります。
いずれも、ポケッタブルだったりスタッフバックに入っていたりとコンパクトになるので、リュックの中に入れてもかさばらず、重さもたいしてありません。
登山といえばチェックのシャツというイメージを思い浮かべるかもしれませんが、最近では速乾性素材の様々な色やデザインのシャツが販売されています。
長袖シャツはジッパーのものもありますし、丸襟やVネックのものもあります。
どちらにしても、これらも綿素材はNG。
吸水速乾性に優れた素材にしましょう。
デザインや柄で選ぶのではなく、機能性にこだわって選ぶ方が登山を安全に快適にしてくれます。



がおすすめ。
登山行程によりますが、重いザックを背負う場合おあります。
時々、休憩中に腰のあたりが衣擦れで皮膚を傷めて困っている人を見かけることがあります。
靴擦れはよくありますが、最近ではファッショナブルになった影響で衣擦れもあるのだなあ・・・とびっくりしました。
この衣擦れはサイズに合っていないミッドウェアを着たり、お洒落にオーバーシャツに着たりしているからだと思いますが、ミッドウウェアがぴったりしすぎても腕や肩が引っ張られて疲労感をおぼえてしまうので気を付けて下さいね。
吸水速乾性素材の登山ウェアとして各社が開発しているのですが、素材によって着心地が違うのでこれは、着心地のよいもの、動きやすいものを選ぶのが正解です。
肌寒い時に活用するのがその他のミッドウェア
冬に近い季節や高山ではインナーダウンは必須です。
日帰りトレッキングでもフリースウェアやベストがあったほうが安心です。
コア(腕や首以外の身体の中心部分)の体温を守るために、ベストなどでもいいでしょう。
その場合はボタン付きシャツなどではなく、少し厚手のジッパー付き(ジッパーがあると開いて体温調整しやすいですよ)ミッドウェアを着るといいでしょう。
入山する山の高さ
入山時期
山行ルート
天気予報
に応じて選ぶと安心ですよ。
防風、防雨、保温にはアウター!
アウターは雨天のレインウェアとなり、強風が吹いた時に体温を奪われないようにする、大切な防寒具となります。
春山は特に冬の気象に戻ったり、春雨前線の影響を受けたりと、気温も天候も不順になりがちです。
天気予報をチェックしていても、いきなり急変して、稜線上が防風で低体温症になり遭難という事例もたくさんあります。
トレッキング、登山に関わらず、ゴアテックスなどの防水透湿性素材のアウター上下は必須装備です。
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これにプラスして、足元にひざ下防水スパッツを履きます。私は沢登りや藪に入る時などは必ず膝下スパッツを装着します。
防水透湿性素材のアウター上下は必ずリュックに上下を入れておく、もしくは着用していくようにしましょう。
以上のように、インアーウェア、ミッドウェア、アウターウェアを重ね着するレイヤードルックが春山登山の基本となるのです。
3点セットが基本とはいえ、先にお話ししたように、インナーがカップ付きタンクトップでその上に薄手の長袖インナーの場合もありますし、ミッドウェアが長袖シャツにフリースベストの場合もあるので、重ね着枚数が3枚でなければいけない!というわけでないので安心してくださいね。
綿素材は避ける
吸水速乾性に優れている
暑すぎず寒すぎない(動いたら暑くなりますから、少し肌寒いくらいのほうがよい)
晴れていても防水透湿性アウター上下は持っていく、高山や早い時期の春山ではインナーダウンも持っていく
などに気を付けるようにしたら、基本ラインはバッチリです!
登山服のあれこれ
たまに半袖シャツの人も見かけますが、私は長袖をおすすめします。
虫や紫外線からお肌を守ってくれるのは長袖です。
山の紫外線は凄いですよ。シミの原因にもなるのでご注意を。
半袖にアームカバーを着けるというのもアリですが、虫からは守ってくれません。
友人が山に入って、レイヤードをしっかりしていたから、スズメバチに刺されても皮膚まで達しなかったという例もあります。
ハチだけでなく、ダニやヒル対策にも長袖長ズボンは有効です。ダニなどは時に怖い病原菌を媒体し、命が危険になることもあります。
ボトムスにスパッツとスカートというお洒落なトレッカーも多いですが、「雨の時はどうするのだろう?スカート脱いでからゴアパンツを履くの?」といつも不思議に思います。
広くて安全なルート、余裕がある天候などではいいですが、不明な場合は「すぐにレイヤードを変更できる服装」で入山するほうが安全、快適だと思います。
また、最近はインナーも更に進化して「インナーの下のインナー」なるメッシュ素材のインナーが出ています。
速乾性素材は肌にぴったり引っ付いてしまうのですが、さらっと快適にしてくれる層を作ってくれるこのメッシュインナー、沢登りなどの時には大活躍です。
通常のトレッキングでも汗を快適に通してくれるので、ウェアがぴったり張り付いて困るという方はお試しくださいね。
その他、筋肉疲労や故障予防の機能がある加圧性のインナーがシャツやスパッツとしてラインナップされています。
私はボトムスのズボンの中に、これらのスパッツを着用する時がありますが、明らかに疲労度や筋肉痛の度合いが違います。
サイズに合ったものでないと、かえって疲労度を増したり、故障の原因となったりするかもしれませんので、専門店スタッフに相談して購入するのをオススメします。
春山登山 装備は何が必要?
私は山の師匠から「山は登山であってもハイキングであっても同じ。山は目的によって対応をかえることはない」というものでした。
最近の言葉を借りるのならば「山は人に対して忖度無し」ということですね。
ルートが整備され、初心者でも簡単に登れるようになった高山もあります。
時にはアウトドア会社などのツアーもありますし、写真が目的の入山、登山が目的の入山、岩登りや沢登りが目的の入山など様々でしょう
それぞれの目的に応じた専門装備があると思いますが、それらの専門装備以外のものは
『山行の基本装備』として常に携帯するようにと、教わりました。
コンパス
地図(国土地理院二万五千分の一地図と登山地図)
携帯電話
常備薬や救急用品
保険証(コピーでも可)
防水透湿性アウタ―上下
手袋
インナーダウンやインナーフリースなどの防寒具
45ℓゴミ袋
行動食
水
銀マット
ナイフ
替えのインナーと靴下
笛や鈴
これが基本の装備で、これにツエルトや細引き(細いザイル)なども加えて持っていくように言われました。
これに加えて、積雪がある高山ではアイゼンなど、冬山で必要な装備も持っていきます。
最近はスマホのアプリも機能が良いので、地図を持たない人も多いかもしれませんが、山域の全体像のイメージを見るには地図を大きく広げた方がイメージしやすいでしょう。
ゴミ袋は雨が降った時にはザックに被せることもできますし、羽織ることもできますので、万能グッズとして常に携帯。
銀マットは小さめでいいので、お尻が置けるサイズがあれば、「直接地面に触れて濡れたり冷えたりすること」を防止できます。
手袋も忘れないようにしましょう。
替えのインナーや靴下はジップロップに入れて防水。濡れた時の着替えや寒い時の重ね着として入れておきます。
その他、帽子や首に巻くタオル(ストール)やサングラス、登山用ストック、ひざ下スパッツなどがあれば完璧でしょう。
春山はある時は夏のように暑くなることもありますが、ある時は冬山へ逆戻りと変貌を遂げる危険性があります。
その為、春や秋は入山人数が多い事もありますが、様々なレベルの登山者が山に入り、天候不良による遭難事例もたくさんあるので注意が必要です。
低山登山の遭難例はこちら。
衣服に潜む危険性例も ⇒ 低山で遭難や事故の体験談5例。とっても危険な低山登山
高度やルート、エリアにもよりますが、縦走やテント泊、積雪やシュルンドがある山に入る場合、時には春山装備に加えて冬山装備を用意する時すらあります。
それほど、春山は気象条件に左右されやすいリスクがあるので、装備や服装に気を付ける必要があるのです。
春山登山の靴はどうする?
ウェアと同じく、靴も高機能でファッショナブルになりました。
ちょっとした低山などはスニーカーで入山しているハイカーも見かけます。
これは富士山などの観光客が多い山にも言えますね。
タンクトップに短パン、サンダルやスニーカー。見ていて怖いです。
遭難の原因になるものは体調不良が多いですが、それ以外に怪我によるものも多いです。
特に下山途中には滑ったり、足首を挫いたりすることもあります。
浮石などで挫く場合もありますが、下山では脚が疲れて怪我をする割合が大きくなるそう。
そんな足元を守ってくれるのが登山靴。
ゴアテックスのような防水透湿性機能に優れたものがオススメ。
登山用品店で店員さんに「どの山に、どういう目的で入山するか」伝えて選ぶようにしましょう。
テントを持っての縦走だと荷物が多くなるので、登山靴もグリップのより効くものが安心です。
また、積雪が残っている山に入る場合などでは、アイゼン装着可能な靴を選ぶ必要があります。
雨が降ったりする場合に備えて、防水性がるものが良く、足首のカットもそれに応じたものが安心でしょう。
また、必ず試着してから選ぶようにしてくださいね。
登山ショップなどでは、坂道スロープなどが置いてあるところが多いです。
実際に登山用の靴下を履いて、靴を試着し、坂道スロープを上ったり下りたりして試します。
この試着で、靴擦れなどの予防はもちろん、走行性やグリップも確認できるので、ネットでポチっと買うのではなく、試着してから購入するほうがオススメです。
春山登山の服装のまとめ
春山登山は冬の天候や春雨前線の影響も受けやすいので、服装や装備、靴の選択がとても重要です。
時には冬の気温に戻ることがあるので、装備も冬用のものも持っていく必要があるくらい、実は荷物が多くなる時期でもあるのです。
ファッション性を楽しみつつも、まずは機能性を重視したレイヤードで、安全、快適な春山登山を楽しんでみてはいかがでしょうか?