春山は新緑やお花畑、雪景色と、たくさんの光景を楽しめます。
そこで春山登山で遭難しないためにも大切な装備についてお話ししたいと思います。
春山は冬山とは違って薄手の服装になりますが、実は装備は冬山と同じ装備が必要な場合もあるくらい、装備の準備が大切です。
春山経験者は再認識のために、これから春山に登ってみようと思う方は春山の危険性と装備の必要性の認識のために、ぜひ参考になさって下さいね。
目次
春山の登山の装備はたくさん必要!
春山は冬山に逆戻りする時もある
冬用のオーバーパンツやジャケット、冬用シュラフ、そしてピッケルやアイゼンなど冬山の装備は多く、そして重量も夏山と違って、重くなってしまいます。
春になったら服装も薄手のものになるので、装備も減らして・・・と思いがちですが、実はそれは大きな間違い。
春山は、時には冬山と同じ装備が必要な場合もあるからです。
そんな春山登山をする場合、適した服装で、適した装備を持っていないと春山ならではの遭難のリスクが高まってしまいます。
当たり前ですが、冬の次に春がやってきます。
標高の高い山だけでなく、日本海側の低山などでもまだ積雪が残っているところもたくさんあります。
落雪もありますし、春は全層雪崩が起きやすいです。
そして、春らしい陽気の中、山を登っていたものの天候が急変して、冬山に逆戻り・・・という場合もあり、そういう時はとても深刻な状況に陥ってしまいます。
春の軽装でいたら、いきなり冬山に放り込まれるのですから。
そんな時、リュックの中に防寒着や防水アウター上下がなかったら・・・・
想像しただけでも厳しい状況はおわかりいただけると思います。
ですから、春山の装備は決して軽視してはいけないのです。
山へ入る目的は様々でも最低限の装備は必要
それぞれの山に、それぞれの目的があって、山に入ることでしょう。
低山でハイキングを楽しむ為。
山の史跡を探索するため。
高山で芽吹く植物を見に行くため。
縦走を楽しむ為。
山菜採りやキノコ採りをするため
などなど。
この一つだけでなく、いくつかを目的に山に入る人もいることでしょう。
例えば、写真が目的なら目的に応じて、本格的なカメラや三脚などを重たくてもリュックに入れて持っていく人もいるでしょう。
日帰りで入り慣れた山だからとカゴ一つで山菜採りのために里山に入る人もいることでしょう。
低山だから、ちょっと思いついて一人でハイキングしてみようと服装もリュックもちょっとしたアウトドアウェアで入ってしまう人もいたりします。
でも、どんな目的であっても、適した服装と同じように装備が大切なので気を付けてほしいと思います。
遭難しない為に、またもしも、遭難した時に命を守ってくれるのが装備だからです。
春山だから軽い装備でいいと思う人が多いのですが、先にお話ししたように、冬の天候になってしまう時や、春雨前線の影響で雨になることも多いのがこの季節の特徴です。
山経験が長い人は「春山は荷物が一番多くなる」という人すらいます。
ではどんな装備が必要なのでしょうか?
春山登山の場合の装備例
春山の服装(▼詳しくはこちらの記事をどうぞ▼)
⇒春山登山の服装は?装備や靴などを選ぶのも注意が必要です。
コンパス
地図(国土地理院二万五千分の一の地図、登山地図など)
救急セットや常備薬
ヘッドライト
携帯電話(予備バッテリーもあれば)
行動食
水
緊急セット
ホイッスル
鈴
アイゼン
ピッケルやストック
プローブ
雪崩ビーコン
シャベル
銀マット
ツエルト
インナーダウンやフリース
防水透湿性アウター上下
手袋
サングラス
帽子やネックウォーマー
替え用アンダーと靴下
など
テント泊ならこれにテントやシュラフ、それに食材やガス、コッヘルなどの火器も必要になります。
寒さに備えてカイロや温かい飲み物も必要かもしれません。
上記は最低限の装備。
アイゼン
ピッケル
プローブ
雪崩ビーコン
シャベル
等の冬山装備は積雪がある2000m以上の山では必要となる場合があります。
春だから装備しなくてよいものではなく、雪崩の危険性がある積雪、地形、天候などの際には必ずゾンデ、雪崩ビーコン、シャベルは必携です。
事前に入る山の情報を収集し確認してそれらの冬用装備も携帯しましょう。
また、アイゼンは特に注意が必要です。
高山で積雪がある場合、春ではアイスバーンになっていて非常に滑りやすい場所もあります。
最近は気軽に高山の上級者コースにも軽装備で入って遭難する人がいるようです。
下界では春の陽気でも、高山では気温もまだまだ低く、積雪も残っている。
でも、春の日差しで昼には積雪の表面が溶け、それがアイスバーンとなって、そこを歩く時は滑落の危険性が高くなります。
そんな時に装着するのがアイゼンですが、簡易アイゼンだと危険な場合もありますし、そもそもハイキング用の登山靴だとアイゼンを装着はできないものもあります。
登る山のルートのどこに積雪があるか、どこに危険な場所があるか、必ず事前に調べておきましょう。
そして、アイゼンが必要な場合はアイゼン装着可能な靴を履き、アイゼンも装備に入れておくようにしましょう。
また、低山の春山登山、目的はハイキングでも注意が必要です。
低山の認識が人それぞれなので里山が低山と捉えている人も多いです。
前述の雪崩ビーコンやゾンデ、シャベルが2000mの山では必要でないと思う人がいますが、その考えは危険です。
2000m以上の山では5月上旬までは冬山とみなして装備を整えなければいけません。
1000mの山でのシュルンドの危険性がありますし、落雪、全層雪崩の危険もあります。
緊急セットについて、遭難した場合に役立つセットです。
この緊急セットは山菜採りやキノコ採りなどが目的の入山でも携帯しておきましょう。
例えば、日帰りで、山の中で調理しない場合はガスなどの「火」は持っていかないと思いますが、この緊急セットに
簡易コンロやマッチ、
ロウソク、
エマージェンシーシート、
鏡
などを小さい防水ポーチやジップロップに入れておきます。
ワセリン
は凍傷予防にもなりますし、火を起こす際の燃料ともなります。
その他、汗や雨でぬれた場合の着替えのアンダーシャツや靴下をジップロップに入れておくと、濡れた時に着替えることもできますし、寒い時は重ね着することもできます。
そして、携帯する装備ではありませんが、登山目的の入山では、入山届を出すことも重要です。
最寄りの駅や登山口などに登山計画書を提出するようにしましょう。
もしもの時に、この登山計画書を元に捜索隊がもしもの時には捜索してくれます。
なければ、針の山から針一本を探すくらい難しいのが山の遭難です。
また、これも装備ではありませんが、もしもの時に備えて遭難保険など加入もしておいたほうが家族の為にも安心ですよ。
春山は美しいけれど遭難も多い
春山は遭難が多い?
季節の変わり目である春や秋は前線の影響も受けるやすいので、山に入ってから悪天候に遭遇することもあります。
夏だと「台風」は天気予報で進路予報だけでなく、風の影響なども気に掛ける人が多いので、山に入るのを躊躇することもありますが、春や秋だと、予報が雨だとしても、そこまで深刻に捉えない人もいるようです。
春は、下界で春雨前線の影響で急に雨になったとしても、山の上では雪となることもあります。
春だと安心して、軽装と軽装備で山に入って降雪となり、低体温症で動けなくなった・・・という遭難事例もあります。
特に春の嵐では強風のため、降雪が無くても体温を奪われて低体温症になるリスクが高くなります。
リュックの中にインナーダウンやフリース、そして風よけの役目を果たしてくれる防水透湿性のアウター上下があれば濡れたり、体温を奪われたりすることを少しでも軽減してくれるでしょう。
急な積雪時に避難する場所がない場合、ツエルトがあればシェルターになりますし、ない場合、シャベルを携帯していたら雪を掘って雪洞が作れますので、そこで風雨や風雪を凌ぐことができるでしょう。
標高2000m以上の山では5月上旬までは本格的な冬山の装備が必要と認識しておいてください。
装備だけでなく、スキルも冬山のスキルがないと遭難の危険性があるので春山だからと気軽に思わない方が賢明です。
でも、GWになると気軽に高山に入る人も多く、毎年のように連休になると遭難のニュースが飛び込んできます。
注意しても不可抗力で遭難してしまう場合もあるのが山ですが、装備の不備やスキル不足、判断不足の遭難は避けなければなりません。
最低限、服装と装備は万全にしておきましょう。
遭難例はこちら
⇒低山で遭難や事故の体験談5例。とっても危険な低山登山
春山の遭難の原因
前述のように、冬から春になると一気に山に対する警戒心や垣根が低くなってしまうようです。
その気の緩みからくる遭難も多いのでしょう。
レベルや山の標高、目的に関わらず、春山は冬山と同じくらい慎重にならなければという意識が浸透していないことが春山登山で遭難する一因となっているのです。
春山の遭難の原因となるものは
雪崩
道迷い
低体温症などの体調不良
転倒や滑落による怪我
野生動物との遭遇による怪我
軽装備とスキル不足から行動不能
日が長くなったからと無計画に登山
雪崩に関しては、特に春山は全層雪崩が多発する季節となります。
森林地帯の上部から崩れる場合もあるので、森林地帯だからと安心できない場合もあります。
道迷いは天候が急変したり、霧が出たりが原因となりますが、案外そういう時は動けない、もしくは動かないものです。
雪解けした後の登山ルートはルートが不明瞭な事が多く、それが道迷いの原因となることが多いのです。
草木が倒れルートが遮断されたり、狭くなったりして、知っている登山道でも全く違う様相を見せることもままあります。
また、春は嵐の多い季節でもあります。
強風が吹くと、まだ気温が低い山ではあっという間に低体温症となってしまいます。
また、融雪して間もないルートは、ジメジメしていて非常に滑りやすくなっています。
ぬかるんでいたり、石が浮石になっていたりして、躓いたり滑ったりし怪我をしてしまう事例も多いようです。
また、積雪がある山、1000m以上の山の残雪部分の斜面をアイゼン無しで通過は非常に危険です。
そして、春になると我先にと山に入る人間と同じように、野生動物の活動も活発になります。最近は熊と遭遇しての事故も多く、渓流釣りや山菜採りは特に注意が必要でしょう。
また、春山ということで軽装備とスキル不足でも登山し、実際は冬山と変わらないレベルの山に踏み入れたことから行動不能で遭難という事例もあります。
冬が過ぎ、春になると日が長くなります。そのせいか、遅い時間の登山開始や下山が遅くなってしまって、道迷い遭難という事例もあります。
行動開始は午前、下山は15時までが基本です。
冬山と同じように、春山は遭難の危険性が高く、その遭難は死に直結するリスクが高いという事を認識しましょう。
春山登山 遭難しないためにはどうしたらいい?
万全な準備をしても、自然が相手の登山です。
遭難とは隣り合わせということを、春山登山をする人は認識しておきましょう。
これは里山、低山、高山に関わらず心に留めて置いて欲しいです。
実際、GWの高山での遭難事故は多発しています。
そして、低山の遭難事例もとても多いですし、里山でも春になると山菜採りなどの遭難(ニュースでは行方不明となりますが)が非常に多いです。
では、春山で遭難しないためにはどうしたら良いのでしょうか?
服装、装備に気を付ける。
前述のように、春山は天候が変われば一気に冬山に逆戻りしてしまいます。
冬の装備や服装の携帯が必要です。
服装については真冬と同じ格好では暑くて、体調不良を起こしてしまいますが、万が一冬の気候に戻った時に備えて、冬の服装をリュックに入れておく必要があります。
また、スキルについても冬山のスキルがある、もしくはパーティのメンバーにいるのがいいでしょう。
そのスキルがない場合は山岳ガイドなど、登山エリアに熟知したエキスパートと一緒に入ることをオススメします。
装備や服装についてもアドバイスやチェックを受けられると思います。
必ず、厚手のインナーダウンや替えの下着上下、防水透湿性アウター上下は持っていってくださいね。
冬用の手袋や帽子、ゴーグルやサングラスも忘れずに入れて置きましょう。
携帯電話とサブバッテリーは必須
少し前まではアマチュア無線が必携でしたが、今は電波状況もかなり良くなったので携帯電話がとても頼りになります。
ただ、気温が低かったり、アンテナ圏外ではバッテリー消耗が激しかったりするので、サブバッテリーを持っていくようにしましょう。
最近はタクシーのように気軽にヘリコプターに救助要請をするのが問題ですが、体調悪化など緊急を要する時にはやはり、携帯電話で救助を求めるほうが賢明です。
時には一刻を争う場合もあるので、必ず携帯電話はアウターの内ポケットなどに入れて「身に着けて」おきましょう。
天気予報を必ずチェックする
GWに多いのが「休みはこの期間だけだから、何が何でも山に入る」ということで、その結果天候が悪くても入山して遭難という事例が毎年のようにあるようです。
休みはまたありますが、命は一つしかありません。
天候が悪かったり、今後の悪化が予想されたりするのなら、登山中止という決断をしましょう。
特に、雨が降ってなくても春山は暴風や落雷、突風なども危険です。
稜線上で暴風にさらされるとあっという間に低体温症になってしまいます。
また突風で滑落した事例もあります。
知り合いは稜線上で落雷にあって遭難しました。あっという間の天候の急変だったそう。
逃げ場のない稜線上ではベテランでも危険です。
事前に天気予報を精査し、山で行動中もラジオや携帯で天気をチェックするようにしましょう。
積雪の危険性を認識する
豪雪地帯では残雪が低山でもGWくらいまである山もあります。
積雪していると、一見して地形がわかりませんが、積雪、残雪があると様々な危険性があります。
その危険性とは
滑落
雪崩
落雪
シュルンド
です。
アイスバーン状になった積雪部分を歩く際にはピッケルとアイゼンが不可欠です。
雪崩に関しては、全層雪崩では木を飲み込んで発生する場合もあります。
また、春の雪は重いので、落雪で骨折したという遭難事例もあります。
そして、里山でも気を付けなければいけないのが、シュルンド。
山菜採りなどで行方不明となり、道迷いかと思ったら、実はシュルンドの下に滑って落ちて、そのまま遭難死という事例もあります。
このように冬山と同じくらいのリスクがある春山です。
季節も山の風景も美しくなりますが、美しさと同じくらい厳しさも持ち合わせています。
装備と服装を整え、ご自身のスキルに応じて登るようにしましょう。
春の登山は遭難に注意!のまとめ
春山登山は冬山登山と同じような装備やスキルが必要です。
そのことを認識せずに登山をすると、遭難のリスクが高まりますし、春山での遭難は冬山と同じくらい死に直結するリスクがあります。
万全にしていても、いつ誰が遭難にあっても不思議でないのが自然という山を相手にした登山です。
少しでもリスクを減らすためにも、服装や装備を整えて山に入るようにしてくださいね。