春の訪れに誘われて低山へ登山。
雪の合間から力強く芽吹く植物や、新緑の梢の音を聞きたくなりますよね。
また、秋は紅葉に誘われて山へ。
でも、実は服装や持ち物に気をつけないと、低山登山でも結構危険な事があるのはご存知でしょうか?
そんな春秋の服装、持ち物、そして山に潜む危険な事についてご紹介したいと思います。
目次
低山登山は服装は?春秋編
春と秋の低山登山は気候が気持ち良いし、目に入る景色は美しいし、登山の一番楽しい季節でもあります。
ここでは、本州の低山の登山(ハイキングなども含みます)の春秋の服装についてご紹介したいと思います。
春山、秋山とは?
登山経験が長い人ほど、春と秋は荷物が結構かさばるとぼやきます。
春山はゴールデンウィークであっても、場所によっては残雪がありますし、春雨前線の影響で雨対策もしっかりとしなければなりません。
梅雨の季節が近づくと梅雨前線も気になります。
また、秋についても、秋雨前線は勿論、最近の気象変動の影響で季節外れの台風や、急な降雪も想定しなければならない場合もあります。
登る山の情報と天気予報(登る山の天気予報)をしっかりと収集して、安全な登山ができる日を選んで登ることが重要です。
この事前の情報収集と計画が登山の醍醐味でもあります。
春山は冬山と夏山と前後に重なっていると考えましょう。
残雪もある箇所もありますし、急な降雪も考えられます。
また、春雨前線に刺激されてゲリラ豪雨、一足早い台風なども心配です。
一方、秋山も夏山と冬山と前後に重なっています。
最近は季節遅れの台風と秋雨前線で、想定外の大雨災害が頻発しています。
つまり、春、秋ともに低山登山は低くても、季節が温暖に見えても、とても注意が必要だということになるのです。
春の低山登山の服装は?
では、春の低山登山の服装はどうしたら良いでしょう?
最近の登山ブームで山ガールが増えた事により、若者を中心にとてもファッショナブルになった登山服です。
カラフルな色合わせでお洒落なレイヤード、木々の緑に映えてとても素敵です。
山では暑くなる前に脱ぐ、寒くなる前に着る、これが基本です。
「体を汗で濡らさない」
「外気や風で体を冷やさない」
この二点が安全登山の観点からもとても重要なポイントとなるからです。
そして、それにプラスして、肌を露出しないことも重要です。
肌の露出は紫外線の影響に加えて、ダニやヒルに寄生されない為でもあります。
暑くても必ず
長袖
長ズボン(レギンスでもOK)
手袋を着用しましょう。
帽子
汗拭き兼用タオルやストール(首の紫外線予防になる)
サングラス
トレッキング用シューズと靴下も適切なものを着用しましょう。
また重要なポイントとしては、下着(肌に触れるアンダー)は必ず綿以外のスポーツ用アンダーや下着を着用しましょう。
アウターシャツやズボンが速乾性でも肝心の下着が速乾性でないと意味がありません。
体温、体力を奪われる原因になるので、この点は必ず気を付けましょう。
友人が下着だけ綿を着用していて、春山登山で低体温症から脳梗塞を発症しました。
行動していると脳だけ暑く感じて、濡れた下着に体温と体力を奪われていたのに気づかなかったようです。
日常でも、汗をかいてそのままにしていると妙に体が重く、怠くなった経験はありませんか?
山では、移動と景色に夢中で、気づいたときには深刻な状況・・・というケースがあるのです。
防水、透湿性(ゴアテックスのような)雨具上下を必ず持っておきましょう。
濡れる前に、寒くなる前に着ることが大切です。
上記が「基本の服装」となります。
これに加えて、春山は下記の服装装備があると安心です。
防寒服:ポケッタブルダウン(小さくなるダウン)
フリースなど
替えの靴下と手袋(濡れた時に取り換える)
秋の低山登山の服装は?
基本的に春山と同じです。
ただ、それに加えて防寒着は必須です。
帽子も行動中に着用する帽子以外に、ニット帽など「防寒性の高いもの」をリュックに入れておくと良いでしょう。
また、手袋も防水性のオーバーグローブを予備として持っておくと安心です。
秋は、特にダニや蜂の活発な季節となります。
肌を出さないことはもちろんですが、虫がこないような色の服装を選ぶことも重要です。
アブは銀色や黒色に引き寄せられますし、蜂は黒いものを攻撃する習性があります。
服装の色を注意して着用するだけで、リスクが軽減します。
低山登山の持ち物。必ず持っていくものとあると便利なもの
低山登山の持ち物、その前に。
まずは、しっかりと登山計画を立てましょう。
登山計画は高山だけのものではありません。
低山でも遭難事故防止のためにも大切ですし、もしもの遭難時に登山計画書があるかないかで、捜索範囲が大きく異なります。
つまり生死を分けるわけです。
登山計画書(ルート、所要時間、持ち物、緊急連絡先など)を作成したら、リュックの中、自宅、最寄りの提出先(登山口、警察、駅など)に提出しましょう。
提出先がなくても自宅には必ず控えを置いておきましょう。
必ず持っていくもの
行動食:腐らないようなもので、手軽に取れるもの。非常食となるものも併せて持っていきましょう。
カロリーメイト
ドライフルーツ
梅干し
チョコレート
飴
ジャーキー等
水:必ず多めに持参しましょう。
地図とコンパス:スマホアプリも優秀ですが、二万五千分の一の地図(国土地理院発行)や登山地図を持っていきましょう。
登山計画を立てる時にも必要です。
雨具:天候が変わりやすい季節です。
防水透湿性雨具上下以外にも折りたたみ傘とザックカバーを持っていきましょう。
救急セット:保険証コピー、常備薬、服用薬、テーピング、除菌ティッシュ、トイレットペーパー、虫除けスプレー、ジップロップなど
ストック:使い慣れていたら、ストックがあると便利です。
緊急セット:ヘッドランプ、鏡、ペンライト、スマホバッテリー予備(電池式充電)ツェルト、エマージェンシーシート、ホイッスル、ワセリン、ライター等
あると便利なもの
テーピング:ストックが破損した場合の補強、足首の捻挫の保定、靴やザックの修理など何かと利用できます。
トイレットペーパーはトイレ時だけでなく、食器類や何かを拭くときにも便利です。ジップロップに入れて持ち帰りましょう。
除菌ティッシュは汚れを取るときだけでなく、怪我の時にも流水で洗った後に拭けます。
緊急セットについて:ヘッドランプは天候悪化した場合、下山が遅れた時に必需品です。
鏡は遭難時、ヘリへの信号として使用、ペンライトは折ると蛍光色になるもので、これも緊急時の信号として夜間に使用できます。
ツェルトは細い紐とセットで持っておくと、もしもの時のシェルターになります。
エマージェンーシシートはスマホよりも小さいサイズですが、防風毛布代わりになります。
使わないことにこしたことはありませんが、もしもの時を想定してお守り代わりに入れておきましょう。
また、リュックを含む持ち物に名前を書いておきましょう。
低山登山。春秋に山に潜む危険な事。
山をよく知る人ほど、山の難度は「高さ」ではないと言います。
地形、植生、ルート、天候、自然環境、難度はそれらすべてが影響しています。
春秋の山に潜む危険 生物
蜂
秋はとても活発に活動します。
オオススメバチは木の根元や土の中に巣を作りますので、外からはわからない場合があります。
偵察蜂が警戒音を鳴らせた場合は必ず近くに巣があります。
刺激しないように、その場から離れましょう。
熊
春は冬眠から覚めた熊が活発に動く時期です。
親子連れで移動しているケースもあるので、特に危険度が増します。
タケノコや山菜などを食べにくるので、低山登山の際に山菜取りも兼ねている場合は特に注意が必要です。
入山区域のクマ出没情報を最寄り自治体HPなどでチェックしておきましょう。
猪
猪もタケノコが大好物です。
土を掘り返した場所がある場合は猪の餌場と泥遊び場になっている可能性がありますので、気を付けましょう。
ダニ
西日本では特にSFTSというマダニを媒介とした感染症による死亡例もあるので、肌の露出がない服装にしましょう。
特に足元は暑くても短パンなどは危険です。
万が一、ダニがついたら、無理に取ろうとせずに(頭がちぎれて歯が残ります。
また、病原体を注入する可能性も高まります)、皮膚科に行って取ってもらうことをオススメします。
ヒル
ヒルが多い山域かどうかは事前の情報収集である程度可能です。
吸血されていても気づかないケースが多いので、ヒルが多い場所を歩くときには、足元を確認して、時々靴下の中をめくって確認しましょう。
靴下の下にひざ下ストッキングを履くとヒルの吸血を防ぐのに有効です。
春秋山に潜む危険 植物
山菜
春は山菜が芽吹き、秋はキノコがたくさん育つ時期です。
山菜の若芽は毒草と間違えやすいものがあるので、注意してください。
また、山に入ったら基本的に山のものは勝手に採取してはいけない場所が多いので注意しましょう。
きのこ
きのこは特に見分けがつかないので危険です。
食用に限らず、触れるだけで危険なきのこがあるので注意しましょう。
例えばカエンダケは楢枯れの側に真っ赤な姿で出てくることが多いですが、絶対に障らない様にしましょう。
うるし
秋は紅葉するので綺麗ですが、触らないようにしましょう。ツタウルシにも注意です。
春山に潜む危険 天候
春も秋も前線が活発な季節です。異常気象がうたわれている現代では、季節外れの台風やゲリラ豪雨がさらに危険を及ぼします。
天候が悪化することが予報されている時には山に入らない決断をしましょう。
また、山中で天候が悪化したら、沢筋は避けて、安全な場所で濡れないように天候の回復を待ちましょう。
視界不良の中の無理な歩行は道迷いや滑落の危険性を高めます。
春秋山に潜む危険 道迷い
遭難で多いのが道迷いです。
トイレで仲間のそばを離れる時、目印となるものを見つけておきましょう。
また、登りと下りは景色が違います。
時々振り返って、帰りの景色も確認したり、登山道標識分岐点、テープなどがある場所では帰りを想定して進む方向もチェックしたりしましょう。
特に、迷いやすいなと感じた場所は地図にチェックを入れたり、目標物(木や石)をメモしたりしておくと安心です。
万が一、迷った時は、下らずに、上を目指して引き返しましょう。
低山登山 春秋編のまとめ
低山登山は実は遭難がとても多いのですが、報道も高山ほど大々的にされないので、実感がない方が多いかもしれません。
特に天気が変わりやすく、登山客の多い季節の春秋は遭難事故も多いので注意が必要です。
山での事故を防ぐためにも、適切な服装や持ち物、事前の準備、そして山での危険を知ることが重要です。
美しい自然の前に私たちは小さな存在であることを忘れなければ、どんな山も私達にとって素晴らしい体験を与えてくれることでしょう。