冬の低山登山の服装に注意。持ち物や山に潜む危険性について。

冬 低山登山 服装

最近の山ブームで、中高年から若者まで登山人口が増えました。

冬の登山でも低山だからと気軽な服装で入山する人、持ち物もしっかり持たない人などもいて、遭難する事例も多くなりました。

そこで、冬の低山(本州)の登山の服装、持ち物、そして危険性についてご紹介したいと思います。

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冬の低山登山は服装に注意

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低山とは

ここでお話しする「低山」は里山含む本州の低山です。

北海道や屋久島などはまた特殊なので、ここでは扱いませんのでご注意ください。

低山とは山地分類においては、

ポイント 低山性山地(500m以下)
ポイント 中山性山地(1000m位)
ポイント 高山性山地(2000m以上)
として分類されています。

また、植生の分布により

ポイント 低地帯(500mまで)
ポイント 山地帯(1500mまで)、亜高山帯(2500mまで)
ポイント 高山帯(2500m以上)
と分類されていて、

山地帯までを低山とよぶこともあります。

ただ、この植生分布も本州の高山帯植物が北海道の低山で観察できることもあることから森林限界(高山帯)の植生を高山と呼ぶものの、一般的にはやはり「低い山=低山」という認識が一般的となっています。

遭難というとアルプスなどの高山登山を想像されるかと思います。
でも実は低山のほうが遭難事故が多いのはご存知でしょうか?

一般的な認識では「低い山」=低山=安全な山、容易に登れる山という認識があるようで、そこに遭難の落とし穴があるようなのです。


山は一歩入れば、そこは自然の世界です。

特に冬山は低山といえども、さらに危険と隣り合わせです。

私達人間が、自然の中に足を踏み入れるのですから、自然に対して畏敬の念を抱く、つまり万全の準備をしていく必要があるのです。

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冬の低山登山の服装の注意点

山男、山屋、登山を愛する彼ら、彼女らに言わせると、山の難易度は高さではないと言うでしょう。

例えば群馬県の谷川岳は標高2000mにも満たないのに、遭難事故発生世界一の山で、「魔の山」「人喰い山」と別名を持つ山です。

この遭難のほとんどは岩登り登山者の岩場で発生していますが、山の難度は高さではなく、「地形」「植生」「天候」によるところも大きいということに他なりません。

「天候」はその山独特の天気の特徴、風の特徴も含まれます。また、冬山となると、地形も大きな重要ポイントです。

冬山では服装=安全装備ということを忘れないでください。

低山であっても、天候が急変すれば生死を分けるのが装備です。

つまり服装もその装備の一つなのです。

そして、天候が安定していても、体調の維持のために適切な服装は不可欠です。

そこで、スタンダードな低山の冬山登山の服装についてご紹介します。

3番

低山の冬山登山の服装リスト

下着

肌に直接触れる下着、靴下、アンダーウェアは特に重要です。
汗を吸い取り、その汗を蒸散、つまり体温を奪うことにもなりかねません。

ポイント 綿の下着は適切ではありません。
スポーツ用速乾性下着を着用しましょう。

そして、ここで、注意すべきは綿を着用しないことと、

もう一点。

ポイント 厚いアンダーウェアを着用しないことです。

肌に触れる下着やアンダーウェア(レギンスや長袖ティーシャツ)などは薄手のほうが、山行中に動いて熱くなっても、体温調整がしやすいです。

冬山で汗をかくことは避けましょう。

汗をかく=体温を奪われる=体力消耗となるからです。

山ではレイヤードが基本です。

山ガールのファッションはある意味理にかなっていて、レイヤードすることで、暑くなる前に(汗をかく前に)上を脱ぐ、寒ければ着る、これで体温調整をして極力汗をかかないようにしましょう。

ズボン

ポイント 山用のストレッチの効いた長ズボンがベストです。
下着に薄手のレギンスを履いて、その上に薄手のズボンで大丈夫です。

裏起毛など、厚手のものは避けましょう。
脱いで調整できないものは避けしょう。

アウター

ポイント 長袖アンダーシャツの上に冬用トップス(フリースの薄手の記事のものやウールのシャツなど)でOKです。

暑くなったら脱げる、寒くなったら着ることができる、これが基本です。

上記が「スタンダード」で、思ったよりも薄手だと思われたことと思います。

ポイント これに「ゴアテックスなどの防水透湿性繊維の雨具」を着ます。
低い気温の低山では冬用ヤッケ上下でもいいでしょう。

これで大抵の冬山は大丈夫です。

暑ければ上着は脱いで大丈夫ですが、足元が濡れるといけないので、ズボンは履いておきましょう。

ポイント 必ず「透湿性」のある素材にしましょう。
蒸れては体調不良、つまり事故、体調不良つまり、遭難の危険性があります。

足元

ポイント 冬山トレッキング用防水、透湿性のブーツとスパッツを着用しましょう。
膝から下だけを防水するスパッツの着用はブーツの中への雪や水の侵入を防いでくれます。

今回のお話では、低山で一般登山を対象としているので、一般登山道での登山の装備を挙げています。

雪渓など特殊な場所の歩行にはアイゼンなどが必要なので、ここでは扱いません。

アイゼンと一緒にピッケルも必要となり、これらを扱うには特別な訓練がひつようだからです。

それらの装備が必要な冬山はたとえ低山であっても上級者しか行くべきではないと考えましょう。

低山登山 冬

帽子、靴下、サングラス、手袋

ポイント 帽子はニット帽、フリース製のキャップでOK。
ポイント 靴下は前述のとおりウールか速乾性のもの。
ポイント サングラスは雪目にならない為にも必需品です。
ポイント 手袋は薄手のものにオーバーグローブ(防湿防水性のもの)があると便利です。
細かい作業時には薄手の手袋で、防水の目的にオーバーグローブを着用するといいでしょう。

ポイント ※靴下、手袋は替えのものをジップロップなどに入れて「予備用」をリュックに入れておきましょう。
凍傷は末端から発症します。濡れたらすぐに取り換えられるようにしましょう。

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低山登山の持ち物チェック、リュックの中は?

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基本のセット

地図

ポイント 二万五千分の一の地図を用意しましょう。
スマホアプリも優秀ですが、電波不良、故障、電池切れなど不測の事態に備えて、地図は必需品です。
山に入る前にもルートを確認、迷いやすい箇所もチェックしておきましょう。

コンパス

地図とセットで使えるようにしましょう。地図はジップロップなどの防水袋に入れて、コンパスは首から下げておくと便利です。

コンパス

水とお湯

保温ポットにお湯、カバー(靴下でも可)とペットボトルに水を用意しておきましょう。
冬は乾燥するので、気づかないうちに脱水症になりやすいです。

行動食

パンやおにぎりもいいですが、非常食も兼ねて手軽に食べられるものも用意しておきましょう。
チョコレート、ドライフルーツ、梅干し、飴、カロリーメイトなど。

カロリーメイト

断熱マット

雪の上に直に座ると濡れる原因になります。
銀色の断熱マットでも、座布団サイズのエアマットでも、かさばらないものを用意するといいでしょう。

ヘッドランプ

もしもの時の為にヘッドランプは常備しておきましょう。

冬ではステンレス製のホイッスルよりもプラスチック製の笛にしましょう。

カイロ

足裏に貼るもの、背中に貼れるものなど袋に入れておきましょう。

貼るカイロ

ダウンジャケット

小さく収納できるダウンジャケットやダウンズボンがあると安心です。

ストック

必ずスノーバスケト(パウダーバスケット)装着のストックを。
未装着だと雪に刺さってしまいます。

先端だけを指すためのものなので、他のシーズンのストックのままで持っていかない様に注意してください。
スノシュー着用だとストックは必須です。

三種の神器

ポイント ビーコン
ポイント スコップ
ポイント ゾンデ

雪崩に埋もれた時に位置を発信するビーコン
位置を特定するゾンデ
仲間を掘り出すためのスコップです。

低山でも地形、植生、積雪量、天候から雪崩の危険がある山域(過去の事例、自治体、区域警察消防HP、山岳会HP登山情報誌や冊子などから情報収集)である場合は必須装備です。

使い方は訓練と経験が必要なので、これが必要な山域は対象から未経験なら対象から外す目安とすると良いでしょう。

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もしもの時の備えの持ち物

替えの靴下と手袋

濡れた時の為にジップロップなどの防水袋に入れておきましょう。

ツェルト

急な雨や風の時のシェルターになります。
低山では雪の量が少ない事が多いので、雪洞を掘って避難することが難しい場合があります。
その時のシェルターとして用意しておくと安心です。

救急セット

ポイント 保険証コピー
ポイント 既往症あれば既往症歴やアレルギーなどのメモと一緒に防水袋に入れておく。
ポイント 服用薬
ポイント エマージェンシシート(銀色の非常用シートでスマホよりも小さいサイズです)
ポイント 鏡
ポイント ペンライト
ポイント テーピングテープ
ポイント ワセリン
ポイント ライター

※テーピングテープは捻挫時以外にも便利。
※ワセリンは凍傷予防に塗る以外に着火剤になる。
※鏡やペンライトは緊急信号用。
※非常用シートは防寒毛布となる。

携帯の予備電源

低温時では携帯のバッテリーの消耗は激しいです。
また、電波が届かない場所で電源を入れていても消耗は激しいです。
予備のバッテリー(電池充電式)を持っておくと安心です。

冬の低山登山。山に潜む危険な事。

   
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冬の低山登山の危険性

前述の服装や持ち物をご覧になって「低山なのに大げさな」と思われたかもしれません。

でも、低山は報道されていないだけで、実は遭難件数が多いのです。

遭難とは文字通り「難に遭う」ということで、難の原因は様々です。

天候悪化によって行動不能、道迷い、雪崩、体調不良により行動不能、滑落、落石など様々な原因により「自力で下山できない」状態です。

例えば雪崩について。
高山だけのものと思うかもしれませんが、屋根の落雪で大怪我を負ったり、命を失くしたりするのはニュースで見覚えがあると思います。

山でも同じです。森林帯では雪崩は起きないと言われていますが、実際に雪崩が起きた事例もありますし、最近の異常気象の影響で、積雪の状態によっては雪崩る場合もあります。

落石は岩登りに限らず、誰かが上を歩いて、もしくは落雪などが原因で起こる場合もあります。

私の友人は落石によりそのまま滑落し、大怪我を負いました。

服装で、綿は着用しないことと書きましたが、これについても低体温症を発症したり、体温が奪われたりすることで、脳溢血などのトリガーとなってしまう場合もあります。

そして、万全の準備をしていても、何が起こるかわからない山です。

救助を待つことも考えて、非常食やライト類、ツエルト、鏡やペンライトなどをリュックに忍ばせていても、大して重くないので、お守り代わりに入れておくと安心です。

使わないに越したことがないのですから。

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山に潜む危険性

低山だからと安心してはいけません。

SNSやブログなどで、個人の山行記録なども参考になりますが、ここで一つの危険性があります。
その個人の山経験が不明だということです。

例えば、「この山はとても楽で、4時間で往復できた。ちょっとしたハイキングだった。」と写真とアップされていたとします。

その人が山の上級者だったらどうでしょう?

同じスピードと技量で登ることはできませんよね?

また、情報の正確性もわかりません。

山の情報誌などでは文責があるので、きちんとしたデータに基づいて、参考ルートや所要時間、難度なども信頼が置けます。

山に潜む危険性は入山前にもあるのです。

決してSNSなどの情報を鵜呑みにして、安易に山に入らないようにしましょう。

3番

危険を回避するには

ポイント 登山計画を立てましょう。
ポイント 天気のチェックは必須です。
ポイント 低山でも登山届けを出しましょう。
もしもの時の捜索が、登山届けがあるのとないのとでは大違いで生死を分けます。

ポイント 単独行は避けましょう。
低い山だから大丈夫と一人で山に入るのは危険です。
また数人で入っても、お花摘み(トイレ)などでその場から離れる場合も要注意です。

体調不良になってその場で待機する(仲間から離れる)ことも危険です。
低山であっても、これが原因で遭難の事例がたくさんあります。

ポイント 中止する
引き返す英断も必要です。
折角の休みだから、と強硬山行は危険です。
天候、体調が少しでも不安だったら迷わず中止して、麓で楽しみましょう。

冬の低山登山のまとめ

山は低い山でも高い山でも危険を伴います。300mない山でも遭難した事例を知っています

低い山だからちょっと写真を撮りに・・・と遭難死、何回も登っているから一人で登山、遭難死、全て「まさか」と思うような場所で起こっています。

自然の中では人間は本当に無力です。

低山であっても特に冬山では危険がたくさんあります。

冬の美しい登山を楽しむ為にも安全な装備と準備を万全にしつつ、もしもの時を想定して、白銀の世界へ踏み出しましょう。

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