山野草と聞いて、一部の珍しい山の植物と想像する方もいるかもしれません。
でも実は、山野草はとても身近な存在で、育てやすく、山に居ずとも、現代の庭、和にも洋にも調和する植物なのです。
そこで初心者にもおすすめ山野草をご紹介したいと思います。
主役にも脇役にもなれる山野草をぜひ取り入れてはいかがでしょうか?
目次
山野草は育てやすい。そもそも山野草とは?
山野草の定義は難しいのですが、決して日本在来種のみを指すのではなく、外来種も含む山野に自生している植物の総称だそうです。
改良に改良を重ねた園芸種と対となる存在ともいえますが、山野草でも改良されているものがたくさんあり、それらが現代の庭を和洋問わずに彩り、飾り、私達を楽しませてくれているのです。
ここでは、もともと山野で自生していて、それが改良されて、庭木に取り入れられているものを山野草ととらえて、その中で初心者にもおすすめのものをご紹介しようと思っています。
山野草は特別?
山野草と聞いて、
「高山で育つ植物?」
「特別なマニアの植物」
「和の庭にしか合わない植物」
というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
でも、それは大きな誤解です。
一般的に「山野草」というと、山で自生している花などだけでなく、低木、中低木などもひっくるめて「山野草」と使います。
私が庭師と「山野草」と話すときは雑木も含めて話していますので、その認識の専門家も多いのでは・・という印象です。
ですから、特別な希少種を選ぶ必要もなく、庭に気軽に取り入れることで、初心者にも手入れが少なく、剪定もしやすい、育てやすい・・・という強い品種が多いのも山野草の魅力です。
和風庭園でないと合わないのでは?
灯篭や鹿威しの側に苔や山野草が、静かに淡い光の下で控えめに生きている・・・そんな風景を思い出すのではないでしょうか?
とても素敵で、心落ち着く庭ですよね。
でも、子どもが小さい、ペットもいる、手入れも楽なほうがいい・・・となると、中々庭師さんが必要な和風庭園は難しいことと思います。
でも、山野草は「普通」に取り入れられますし、既に取り入れられています。
和だけでなく、洋の庭にも取り入れられていますし、ナチュラルガーデン風のお庭にはさらにぴったりです。
さらに、使い勝手がよく、それでいて手入れも楽なので、ガーデニング初心者にもぜひおすすめしたいと思います。
どこで手に入れたらいいの?
ネットでも購入可能ですし、そもそも、後の章でご紹介するように、皆さん驚きの「普通の植物」なのでホームセンターでもどこでも手に入ります。
欧米の山野草は品種保護、自然保護の観点から、生息地から採取するのではなく、品種改良されながら、栽培されています。
一方、日本の山野草は栽培以外に、自生地から採取するようなケースもあるようですが、絶対にしないようにしてください。もし、山で美しい山野草に出会ったのなら、「自分たちの山登りを応援してくれている」「元気をもらえた」と目と心を休ませて、山野草を静かにそっとしておきましょう。
山という厳しい自然界では、植物は鳥、獣、虫、風など様々な助けを借りて増えるのです。
種が飛んでも必ずしも芽吹くとは限りません。
日差しが差し込む場所、水のない場所、土砂に埋もれない場所・・・など様々な困難を乗り越えて花を咲かせている。
山野草が「そこで自生」しているのは様々な奇跡の結果だということを忘れないでください。
初心者にもオススメ山野草7選
それでは、初心者にもオススメ山野草をご紹介したいと思います。
ここではどこでも手に入る品種、扱いやすい品種をご紹介しますが、「え?園芸種でしょう?」とツッコミが入るかもしれません。
それくらい、山野草は実は身近な植物というわけなのです。
低木、中低木も含めてご紹介したいと思います。
アジサイ(紫陽花、ハイドランンジア、セイヨウアジサイ、七変化)
ユキノシタ科/ 落葉低木
高さ0.7~1.5m
ふやし方:挿し木
開花 6~7月
使い方:わき木、生垣、鉢植え
耐陰性 有
梅雨どきの花の代表で、母の日の前にはプレゼント用として様々な品種の紫陽花が売られてもいます。
丈夫で手入れも楽なので初心者に一押しの山野草です。
元々日本に自生していたガクアジサイなどがヨーロッパで鉢植花として品種改良され、逆輸入されたのがハイドランジア(セイヨウアジサイ)です。
セイヨウアジサイは日本のアジサイと比べてやや寒さに弱く、樹高も低いのが特徴です。
また、日本でも改良された品種がたくさんあり、八重のものから斑入りのものまで、色形とも多彩です。
我が家の庭では霜も、少しの積雪もたまにありますが、セイヨウアジサイ含むすべてのアジサイが元気に大きく育っています。
ご存知のように、土性に花色が左右されるので、酸性かアルカリ性かと土壌の状態を知る試験役ともなっています。
葉の形がかしわのようになった「カシワバアジサイ」は地植えでも鉢植えでもとても見応えのある品種ですし、「アナベル」は大きな球場の花が純白になってとても豪華です。
日あたり~半日陰の水はけのよい場所に植え付けると大きく育って、花をたくさんつけてくれます。
剪定は今年伸びた枝か花を咲かせた枝の頂部から2~3節目の脇芽が9~10月上旬に花芽になります。
私はギリギリこの時期まで花はそのままにして、色の変化を楽しんでいます。
ウツギ(空木)
アジサイ科/ 落葉低木
高さ1.5~2m
ふやし方: 挿し木
開花 5月中旬~6月上旬
使い方:わき木 生垣 鉢植え
耐陰性 有
枝の中が空洞から「空木」と呼ばれています。
小型のヒメウツギから斑入りのサラサウツギまで色も花の形も樹高も様々なものがあります。
耐陰性、耐暑性に非常に優れていて、とても育てやすく、メンテナンスもしやすいです。
ヒメウツギは剪定しなくても、丸くチョコンとお行儀よく育ってくれますが、ウツギの種類によっては枝が暴れるので、注意が必要です。
強剪定しても枯れず、本当に丈夫な山野草です。
バイカウツギは花がとても美しく、香りもあるので、ウツギの中でも特におすすめです。
更紗ウツギは薄ピンク色の斑入りの小さな花が鈴のように下向きに咲いていてとても愛らしいです。
鉢植えや省スペースにはヒメウツギがオススメです。
剪定することなく、丸くまとまってくれるので、とても手入れが楽で、初心者でも育てやすい山野草です。
ヤマブキ
バラ科/ 落葉低木/
高さ1~15m
増やし方: 挿し木、株分け
開花 4月中旬~6月中旬
使い方: わき木 鉢植え
耐陰性:有り
絵具などの「山吹色」の由来のヤマブキです。 山吹色の花は古くから『万葉集』にも詠まれてきたこともあり、古くかヤマブキがあいされていたのだということがおわかりでしょう。
八重咲のヤエヤマブキは開花期間が長いです。斑入りのものもあり、シロヤマブキはヤマブキの変種で白い花を咲かせます。
木陰を好むので、庭の木々の側に植えるのにぴったりの山野草です。
花瓶に入れて飾ると、しなやかな枝と花が映えるアレンジメントができます。
結実するので、それを楽しむこともできます。
ヤブデマリ オオデマリ(大手毬)
レンプクソウ科 ※スイカズラ科で分布される場合もあり/ 落葉低木
高さ3~4m
ふやし方:挿し木
開花:4月下旬~6月初旬
使い方 わき木
耐陰性 有
原種はヤブデマリで、白い花を咲かせて、結実もします。ヤブデマリの花びら(ガク咲)が全て装飾花になり手毬状花を咲かせ、園芸種でもあります。
ヤブデマリは結実しますが、オオデマリは結実しません。
白い花を丸くたくさんつけて花が散り、地面に落ちたその花びらもかわいらしいので、植える場所が道路に面しているとお掃除の必要性がでてくるかもしれません。
スノーボールという品種名で売られていて、小さな株でも地植えすると丈夫に大きく育ち、伸びた枝に手毬上の白い花を咲かせて楽しませてくれます。
剪定に気を遣うこともなく、虫も病気も心配ないので、我が家では邪魔になるところを剪定する以外はノーメンテナンスです。
花器に入れてアレンジメントするのにも適していますし、初心者にもとてもおすすめの山野草です。
ナンテン(南天)
メギ科/ 常緑低木
高さ1~2m
ふやし方:挿し木 株分け 実生
開花:5月~6月
使い方 わき木 生垣 鉢植え
耐陰性 有
「難を転ずる」という演技担ぎに、赤飯などの上に葉を添えて毒消し代わりにと、昔から親しまれている木です。
白い実色の異なる品種が売られています。
耐陰性がありますが、実つきをよくするためには日照が必要です。
江戸自体からの園芸品種であるシロナンテン以外にもウルミナンテン、キンシナンテンなどの品種があります。
赤く色づく葉は、とても美しく、お弁当やお節、料理に毒消しという役割と共に、上品な彩を与えてくれるので、日常に役立ってくれる山野草です。
庭の緑と紅葉、お料理の彩の補助に縁起物・・・と一人何役も担ってくれる、地味ですがとっても役立ち、しかも丈夫なので、初心者にもおすすめの山野草です。
ユキノシタ(雪の下 虎耳草)
ユキノシタ科/ 常緑多年草
草丈20~60㎝
ふやし方:根伏せ 株分け
開花:5月~7月
使い方 下草 鉢植え
耐陰性 有
ユキノシタは雪が積もっていても、緑の葉っぱを雪の下で広げているその生命力からユキノシタと名付けられ、食用、漢方などでも古くから用いられています。
今では様々な葉の色の園芸種がカタカナのお洒落な名前で販売されているので、庭のカラーリーフガーデンの主役にも、脇役にもなれる万能型の山野草です。
半日陰を好むので、暗くなりがちな北側の通路などに植えると、殺風景だった通路がカラーリーフガーデンとなり、しかも丈夫でお手入れも簡単なので初心者にもおすすめです。
ヤブラン(藪蘭)






ヤブランは放置していても同じ草姿を保ち、とても丈夫な山野草です。下草として優秀で、また、小道のボーダーとしても使いやすく、初心者には特におすすめの山野草です。
山野草 初心者におすすめのわけ
前章では低木、下草両方の山野草のおすすめをご紹介しました。
特に初心者にもおすすめできるように、
手入れが簡単
楽しみがある
耐陰性があるものを
中心にご紹介しました。
手入れが簡単とは?
剪定で樹形が変わったり木が痛んだりするものがあります。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というように、植物の種類によって剪定の仕方もあるのですが、初心者にとっては、なかなか難しいですよね。
ちょっとくらい強めに剪定しても枯れない、剪定し忘れても大丈夫な種類をご紹介しました。
楽しみがあるとは?
まずは花でしょう。
花が可愛らしい、美しいとお庭が華やかになります。
そして、香りも大きな演出をしてくれるでしょう。
そして、忘れてはいけないのが「実益」です。
ナンテンのようにお料理に役立ってくれる植物は日常生活で重宝してくれますよ。
大皿に盛った煮ものにナンテンの葉を添えるだけで、料亭風に変身です。
耐陰性があるとは?
実は、耐陰性はとても重要なポイントです。
虫がつきにくい品種が多いですし、殺風景でジメジメしがちの日陰で大活躍をしてくれるからです。
水はけなどの土壌の心配もあまりしなくていい品種も多いですし、グランドカバーの役割をしてくれるのも耐陰性がある品種となります。
初心者にもおすすめ山野草のまとめ
山野草はすでにとても身近な植物に驚かれたことでしょう。
小さな鉢に鎮座した高山植物もいいものですが、実際の庭で私たちの目を楽しませてくれる身近な山野草は、丈夫で手入れが簡単です。
そして耐陰性があるので、色々な場所を飾ってくれますし、日常生活で楽しみもくれる植物です。
初心者の人には特におすすめしたいので、身近な山野草をぜひ取り入れてみてくださいね。