今でこそインテリアグリーンやインドアグリーンなどとよばれ、植物のある暮らしとして自宅の室内で観葉植物を育てている方は一般的になっているかと思いますが、実際に“観葉植物”という概念自体が一般に浸透したのは1970年代だったといわれています。
日本の近代化都市化が進むにつれて街から草木が失われていくとともに、集合住宅に住む人の数はどんどん増えていき、そんな時代の流れの中で室内でも育てられかつインテリア性もある植物として一般家庭で注目されるようになってきたのがこの頃だというのです。
生活様式の西洋化というのも大きな理由だったようです。
何かとストレスの多い現代社会、長時間パソコンに向かって作業したり、人との対面での関わりも少なくなる環境で暮らす人も多い昨今では、癒しを求める人がさらに多くなりブーム再来となったようです。
ワンルームなど限られた空間の中でも取り入れやすく、種類によっては栽培・お世話も簡単だったりと初心者フレンドリーでもある観葉植物について、今回はメリットとデメリットに分けていくつかご紹介させてください。
これから初めて観葉植物を購入しようか検討している方も、流行っているけど自分に合うのかどうかわからないな、という方も、この記事で少しでも今後の参考になれば幸いです。
観葉植物を室内で育てるメリット
癒しとリラックス効果抜群
仕事で身も心も疲れることが多く、日々室内にある観葉植物に癒されています。
『癒しといえばペットでしょう。』という意見もある と思いますが、動物などを飼うとなるとアレルギーや住居の環境、資金の面でもクリアできない部分がある人がいると思います。
そんな人にもオススメです。観葉植物はフィトンチッドとよばれる揮発成分を放出しますが、それには自律神経が整ったり精神をリラックスさせる効果があります。
植物を眺めていると目も安らぎとても良いですよ。
日常管理が簡易なものが多く育てやすい
植物といえど生き物には変わりありません。
どこでも放っておいたまま元気に育つことはないでしょう。
それでも、多くの場合水やり 回数が少なくて良い、環境への適応力が高く手入れしやすいメリットの多い品種がたくさんあります。
初めて植物を育てるという方に も観葉植物は入門編として手が出しやすいです。
素敵なインテリアにもなる
家の中をおしゃれにしようと小物や装飾品を買うとなるとその人のデザインセンスが求められ、一歩間違うとダサいだけでなくごちゃ ごちゃと散らかった部屋にみえてしまいますよね。
そういう時こその観葉植物です。
例えば室内に一鉢の緑を取り入れることで必ずと 言っていいほど雰囲気は良い方に変わります、アクセントとして目は引くけれど散らかった印象は与えず、衝立のような仕切りとして の役割も担ってくれて大活躍です。
空気清浄にもなる
空気中の有害物質、例えばシックハウス症候群の元となるホルアルデヒドやトルエンなどの成分を吸収してくれるのが観葉植物がメリ ットであるといえる大きなポイントだと思います。
植物にはこれらを吸収してろ過してくれる働きがあるんです。
また、植物が放出す るマイナスイオンで空気はきれいになります。
もう良いこと尽くめじゃないですか。
“サンスベリア”や“アイビー”などはとくに浄化能力が 優れている品種ですよ。
贈り物としても喜ばれる
例えば身内や友人がお店をオープンするときに、お祝いにお花を贈ることもあるかと思いますが、長い間置けて華やぐ観葉植物も喜ば れますよね。
観葉植物にも花ことばがあるので、縁起の良い花ことばの植物を選んで贈ればお祝いの気持ちも更に伝わって良いのでは ないでしょうか。
加えて、“幸福の木”や“セローム”、“パキラ”などの品種は日陰にも強いですし手間もかからないので育てやすい=お店に置 いておきやすいかと思います。
加湿効果がある
植物には根っこから水を吸って葉っぱの気孔から水分を放出する蒸散作用というものがあり、加湿の効果がうまれます。
蒸散作用の強 い“カポック”は日光を浴びて蒸散が活発に起こるのでお勧めです。
他には気孔の多い大きな葉のもの、“ストレリチア”や“オーガスタ”あたりも良いですね。
『夏場は湿度が高いから加湿はいらないよ~。』という意見もありますが、そこはよく考えてみてください。
暑い時期は冷房を使う機会が多くなりますよね。
冷房を使っていると気付かぬ間に空気は乾燥しちゃって喉を傷めたりもしますよね。
夏風邪対策としてもつかえると思います。
あと、気持ちの問題と片付けられてしまえばそれまでですが、殺風景な部屋より緑のあ る部屋の方が心も潤いますよね。
カビを抑制してくれる
樹木が放出するフィトンチッドという成分には殺菌力や消臭効果もあるんです。
そしてフィトケミカルといわれる化学物質を出して雑菌の繁殖も抑制するんだそうです。
ジメジメした季節など知らない間にカビが生えて、それを吸って生活していたなんてことになった ら…想像しただけでも気分を害しますよね。
室内で観葉植物を育てることで森林浴のような爽快感を体感できるなんて、もう観葉植物 様様ですよ。
観葉植物を室内で育てるデメリット
家を空ける機会が多く結局枯らしてしまう
日中は仕事に行くし、休みの日は旅行にも行ったりするし、なんやかんやで家を空けることが多いと結局枯れてしまうのが常。
いくら お世話や管理が簡易だといえどもやっぱり生きているものは出かけるのが好きな人には向いていないと感じます。
逆に観葉植物がある ために行動制限が出たりしてもおもしろくないです。
緑ならフェイクグリーンでいいかなと思います。
大量に増えてしまうので大変
“ポトス”などのつる系の観葉植物はほんとに成長が早いです。
ちょっと剪定しないでいたらどんどん増えていって鬱蒼としてきちゃったり…デメリットだなと思います。
あとは、室内に入る日照時間が少なかったりして光が足りないよという時、植物はより光を求めて徒長していきますよね。
どんどん横に広がってしまいます。そ
のような状況で人間の勝手で切っては捨てるを繰り返す行為は罪悪感すら抱きます。
だからといってそのままにしておいて問題ないほど広い家には住んでいないので、こまめな手入れができない人は特に やめた方がいいと感じます。
土カビが発生する
これは室内で観葉植物を栽培する際の最も大きなデメリットといえるかもしれません。
部屋の中にカビが生えた植物があっては空気清 浄どころの話じゃありませんよね。
水やりはいつでも「三日に一回」などという事務的作業とは違います。
目安にはなっても、実際は 天候を考慮したりちゃんと植物の土を確認してやらなければ根腐れの原因にもなります。
湿度の高くなる梅雨の季節などは特に気を使 わないと、気がついたときにはカビだらけになってしまうかもしれませんよ。
そう考えるとやっぱり植物を室内に置いておくことに対 する抵抗感はぬぐえません。
実は酸素を放出してるだけじゃない
森林、山など緑に囲まれた場所に行くと酸素がいっぱいで清々しい気持ちになりますよね。
そこからか、大抵自宅で植物を栽培するときも『緑が酸素を吐き出してくれるから家の中はおいしい空気でいっぱい~。』なんて思いがちです。
しかし私たちは中学生の理科でも教わったはずです。
緑色の植物が葉っぱから酸素を放出するというのは光合成している時だけです。
そして植物も私たち人間と同じく呼吸をしています。
つまり、朝から晩まで酸素を吸って二酸化炭素を吐き出しているということです。
一人暮らしなら自分だけが吸っている酸素も、観葉植物のせいで数人とシェアしている状態になってしまうじゃないですか。
マイナスイオンが出る空気清浄機でも あればいいと思います。
虫を誘ってしまう
以前、食虫植物をおけば家に侵入しようとするハエや蚊を退治できるんじゃないかと考えて窓辺で数種類の食虫植物を育てたことがあるんです。
“ハエトリソウ”なんていう分かりやすいネーミングの品種も購入しました。
結果からいうと、大失敗でした。彼等はカメレオンのような活動的ハンティングはしませんし、クモのように大きな罠を仕掛けることもありません。
ただただその場で甘い蜜を出 して虫を誘い込むだけなのです。
その効果はというと、ハエや蛾には効き目があるようですが、蚊は引き付けないんだそうです。
おびき寄せられて室内に侵入したハエや蛾が必ず食虫植物に捕まることもありませんし、害虫駆除という観点では全くと言っていいほど無力でした。
逆に室内に入ってくるハエが増えたり、水がたっぷり必要な植物ですから、蚊の製造場になってしまうなんてことにもなって…もう本末転倒、デメリットの極みでした。
小さな子どもやペットがいて心配
小さなお子さんは好奇心旺盛、ダメといっても自分の目の前にあったらやっぱり触ってしまうことも多いのではないでしょうか。
例えば“サボテン”をはじめ多肉植物には刺のある植物が多いので触れることでケガをしたり、興味本位で口に入れてしまっては危険なも のもあります。
食用可能な“アロエ”にも表皮部分には毒性があったり、特に小さなお子さんの身体には良くありません。
飼っている 動物に対しても、例えば幸福の木として人気の“ドラセナ”には葉部分に強い毒性があるので口にすると危ないですし、サトイモ化の 観葉植物は肉厚な葉っぱも魅力的で人気だそうですが、葉や根茎にシュウ酸カルシウムが多く含まれているので猫などの動物が誤って かじってしまった場合炎症や痛みで嘔吐してしまったり…そういうのを考慮したら家の中で観葉植物を育てるのはよくないかなと思ってしまいます。
自分の家との相性が合うのか分からない
自宅のインテリアにもなるので観葉植物を購入しようと思っても、見た目の好みと、設置しようと思っている場所や部屋の環境がその 植物に合うかを照らし合わせるのが面倒くさい。
日当たりが必要か耐陰性があるのか。乾燥が好きか多湿がよいのか、サイズ感の問題諸々、それに購入当初は良い感じと思ったけど想像以上に成長しちゃって結果ワンルームの自宅で存在感の鬼になってしまうことにも …
経験や知識があれば簡単なことなのかもしれないけど、そういうのが分からない初心者としては購入以前の段階でいろいろ手間がかかるので、お店でパッと一目ぼれして買えるような切り花とは違い、結局鬱陶しくなってしまうのがネガティブポイントだなと感じま す。
猫を飼ってると危険な観葉植物がある
別記事で紹介しますが、特にユリ科の植物(ユリ、チューリップ、スズラン)は要注意。
アイビーやポトスなども注意が必要です。
そもそも観葉植物とは何を指しているのか
さて、これまでメリットデメリットを見てきて思った方もいることでしょう。
『観葉植物って一括りにしてるけど、種類が多すぎてよくわからない…。』
『そもそも観葉植物って…どれのこと。』
ということで、遅ればせながら何をもって観葉植物なのかについてのお話をさせてください。
辞書でその名詞を引いたとき、定義は曖昧なもので明確なラインは記されていませんでした。
一般的な知見としては、ざっくり「主に葉を愛でる植物の総称=観葉植物」というイメージで広義としては合っているはずです。
しかし「主に葉を愛でる」というワードが指し示す範囲が広すぎるので、お店などでは更に“ハーブ”や“多肉植物”、“食虫植物”など特徴毎にカテゴリー分けされているものが通常で、その場合は分けられた方の総称で呼ぶのが適当かもしれませんね。
お店などに実際に足を運んだりインターネットで見たりしてコレは観葉植物っていわれているんだな、コレは別の総称で分けられているんだな、など感じられたら一番かと思います。
主観や目線によって分けられ方に差異がある為、この記事での取り扱い範囲としては広義における観葉植物のイメージを指して話をしています。
はじめに書いたように、日本で観葉植物という概念が一般的になったのは1970年代ではあるようですが、草木を愛でる気質、四季の移ろいを自然から受け取る心というのはより古くから日本人の中にあったようです。
江戸時代中期からは花見文化が庶民にまで広がったり鉢植えでの園芸が親しまれるようになったりと、実は植物と私たちの暮らしが密接な関係にあるという歴史は長いんですね。
観葉植物を室内で育てるメリットデメリットのまとめ
様々な種類の観葉植物を例に挙げてメリットとデメリットをご紹介してきましたが、環境によって、植物の品種によって、その度合いは変わっていくでしょう。
ご自身の暮らしているお家の環境と、観葉植物を室内で育てる目的・用途、趣味嗜好に合わせてメリットは心に留めておくことで気持ちがいいでしょうし、デメリットに関しては工夫で改善できる場合もあるので考えてみたらよいでしょう。
最近は、鉢植えだけでなく、水耕栽培や寄せ植えで人気の“テラリウム”があったり、観葉植物の楽しみ方、スタイルは様々ですよね。
インテリアとして、装飾品として、自宅のより良い環境作りとして、もしくは料理に使ったりなど目的も色々あるでしょう。
狭いスペースでも取り入れられる観葉植物はとても魅力的ですし、デジタル化されて多忙な現代人の生活を視覚的、心理的にも中和してくれる役割として大きな力を発揮してくれるはずです。
日光が入りにくいお部屋で暮らしている方には耐陰性の優れた“ヒメカズラ”や“タマシダ”といった植物などがよいかもしれません。
“LEDライト”などを使うことで植物を室内でも健康的に育てる方法もあります。日光不足によって起こる徒長もある程度防ぐ液肥も販売されています。
土いじりや虫が苦手という方には“ハイドロカルチャー”といって人工資材を使った栽培方法での対策もあります。
旅行などで暫く水やりができないときには、給水器用のアイデア商品が結構たくさんありますよ。“多肉植物”や“サボテン”など水やりの少ない植物を選ぶという手もありますね。
今やネットでほとんどの事が簡単に調べられる世の中ですし、用意する道具なども安く手に入る時代です。
自分に合った観葉植物や栽培方法に出会えるまでの道のりは一昔前より俄然近いでしょう。
この記事では品種ごとに詳しく掘り下げた話はしていないのですが、もっと興味が沸いた、もっと観葉植物について知りたいなと思える入口になれたら嬉しいです。
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